日本財団 図書館


 

親元から通学させたい、ろう学校に近い所に家を建てたい」と主人と話し合いました。しかし、主人の収入だけでは支払いがどうしても大変ですので、私も働きに出ることを決心したのです。
帯広に近い芽室町に家を建てることができ、息子は路線バスを利用しての通学が始まりました。また幸いなことに、私は以前に保母の仕事をしておりましたので、清水町にある「ことばの教室」で、言語指導の助手につくことができました。ここでは仕事のためはもちろん、わが子のためにも先生方に積極的に指導を仰ぎました。
親の不安が少なくなるに従い、子供の表情も明るく、落ち着きも出てきました。友だちともコミュニケーションの面では大変なようでしたが、少しぐらいの辛さにも耐えられるようになってきました。自分は少し聞こえるし、先生との会話ができるということが学習においても自信となり、中学三年生になってからは生徒会長にも立候補して選ばれ、今まで以上に頑張る息子の姿が見えてきました。
いろいろなことに耐えながら義務教育を終え、進路は高等ろう学校の普通科、将来、歯科技工士への道を選択したが、技術面でどうしても自信がなく断念し、埼玉県所沢の国立障害者リハビリテーションセンターの印刷科を目指すこととなりました。
一年半の短い期間でしたが、印刷技術を身につけることができ、そして就職となったのです。親としては、できれば親元から通勤可能な所に就職をと願いました。センターの先生が二度も北海道まで出向いてくださり、「本人に最も適した職場を」と、熱心に会社の経営者の方

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION